高萩工場訪問記①──ものづくりの現場が宿す静かな熱量

高萩工場訪問記①──ものづくりの現場が宿す静かな熱量

■ 高萩工場に流れる空気

中尾アルミ製作所の高萩工場には、ものづくりの空気が満ちています。扉を開けると規則的なプレス音が流れ、金属の匂いや湿度が微かに立ち上る。その環境そのものが、私たちのものづくりの姿勢を物語っています。1958年の創業以来、国内で一貫して製造を行ってきたことは、こうした「場」を守り育ててきたことと同義です。


■ 金型と成形が支える多様性

工場内に保管された金型の数は膨大で、約3,000種にのぼります。対応する製品は1,000種類に及び、ひとつの製品に対して15〜30種の金型が必要になる場合もあります。金型部では摩耗の補修から新規図面の作成まで行い、細かな調整が製品の精度を左右します。金型の精度は、最終製品の形状と機能性を直接決めるため、私たちは金型の管理をものづくりの基盤と考えています。


■ ドローイングとスピニング──機械と手の共演

ドローイングプレスやスピニング絞り機は、当工場の成形工程において要です。特にドローイングプレスは1968年から受け継がれる設備で、ゆっくりと長いストロークで加圧することで均一な板厚を保ちつつ深絞りを実現します。板を置くタイミングや圧の掛け方は担当者の判断に委ねられる部分が多く、機械と人が協働して初めて安定した品質が生まれます。

スピニング絞り機は回転する金型に板材を押し当てて成形しますが、全自動ではなく、担当者が最初に手動で理想の圧をつくり、その動きを機械に記憶させています。素材のロットや気温で伸び方が変わるため、日々試行錯誤が必要です。


■ 溶接・打出しの手業──形を整える

成形された部材は溶接や打出しの工程へと進みます。板金溶接部ではパーツ同士を確実に接合するため、担当者が緊張感を持って作業にあたります。打出しでは、成形後の鍋に槌目を入れ、強度と熱効率を高めますが、槌の角度や打ち方は型ごとに変わります。マニュアルはあるものの、最終的には担当者の微調整が仕上がりを左右します。見た目は流れるようでも、その裏には長年の経験が宿っています。


■ 妥協しない姿勢が育む信頼

高萩工場では、派手なものづくりの哲学を掲げるのではなく、日々の積み重ねを大切にしています。手を抜かないこと、細部まで気を配ること。それが、プロの厨房からの信頼につながっています。私たちはこれからも作業者と設備が調和する場を守り続け、鍋やフライパンといった調理道具の品質を高めていきます。